〝火花〟が、案外面白くなくて
9月号の文藝春秋が手に入ったので、話題の又吉さんの〝火花〟を読んだ。勝手に少し期待していたのだけど、案外面白くなくて、ついでじゃないけど羽田圭介の〝スクラップアンドビルド〟をよむと、これが存外面白かった。
よほどのことがなければ芥川賞受賞作を食いつきで読む事はないのだけど、今回よほどのことであった又吉さんのおかげで、自分の好きなタイプの小説に出会えた。図らずも羽田さんが「アウトデラックス」で話していた通りになった。少なくともぼくに対しては。
純文学であっても、僕は、大衆的なミステリオーソを求めてしまうのだが、主人公と祖父との戦争体験のやりとりに、ピリッと辛い山椒のようなエニグマがあり、それがこの長さの小説に丁度いい隠し味になって、ぼくの味覚を満足させてくれた。
又吉さんの単行本が200万部を越えたからといって、別に逆張りの買いをしているのではない。そんな度胸はぼくにはない。それを差し引いた上でも、素直に楽しむことができた作である。どうぞ、お試しを。品切れでなければ、文藝春秋9月号をお勧め。同号掲載の川上慶子さんのお兄さんの手記にある詩には、おおいに泣かされる。
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