ボウイングの天才「ローテーターカフ」
ローテーターカフとは、肩のインナーマッスルで、肩甲骨の表と裏から始まり、肩関節を抱え込むようにつながっているいくつかの筋肉のグループです。肩関節の内旋、外旋の動きをしたり、肩関節を安定させたりします。
この筋肉に気づいて、意識的に自在にコントロール出来ると、ボウイングが魔法のように良くなります。
たとえば先弓に重さを載せる場合、手首をひねりを強くするだけでは、あまりうまくいきません。変に力が入って、動きが悪くなったり、聞きづらい雑音が生じたりします。
手首のひねりは、実際には手首をひねっている訳ではなくて、上腕の橈骨にたいして尺骨を交差させている、すなわち上腕を肘あたりからひねっている動きで、これを肘の回内というそうです(コップの水をひっくり返して捨てる動き)。
それに対して、腕そのものを肩からひねる動きを作るのが、ローテータカフで、これが出来ると、先弓に重さを載せるのなど朝飯前、それだけでなく、肘や手の力が抜きやすくなり、ボウイングのコントロールが容易になるのです。
名付けて、ボウイングの天才「ローテーターカフ」。
さて、実際には意識的にしろ無意識的にしろ、多少の差はあっても、ローテーターカフは使っているのだと思います。これを、意識して使えるようにするにはどうしたら良いのでしょう。
ネット上や書籍には、ローテーターカフを鍛える筋トレや、ストレッチなどさまざまな方法が説明されています(50肩の処置として説明されているものもあります)が、ひとつごくごく手軽にローテーターカフを意識する方法を思いついたので紹介します。
それは、「コーヒーカップを逆手にもって飲む」。もちろん「テー」でもかまいませんが。
つまりこういうことです。
普通は、こうもつ。
それを、こうもってみる。
どうですか?肘から手首のひねりだけでは持ちにくいし、持てても飲みにくいでしょう。肩からのひねりを使うと、容易に飲むことが出来ませすね。これがローテータカフ肩の内旋で、先弓に重さを乗せる方向です。
試しに、その形でカップを置いて、ひねりをそのままで肘をのばしてください。きれいな先弓の形になるでしょう。
ただし、痛みがある時は無理しないでください。50肩かもしれませんよ。
ぜひお試しください。効果抜群です。
« 最近の読書傾向 | トップページ | 4月18日 クラシックライブ@MO:GLA »
「左手」カテゴリの記事
- チェロウォーキング(2013.03.23)
- ボウイングの天才「ローテーターカフ」(2013.03.16)
- ヴィヴラートとは何か(2012.07.05)
「右手」カテゴリの記事
- チェロウォーキング(2013.03.23)
- ボウイングの天才「ローテーターカフ」(2013.03.16)
- ヴィヴラートとは何か(2012.07.05)
お〜!意識してみます‼
ボゥイングで僧帽筋を柔らかくすることが大事かなと思います。
G線D線をアップボウで弾く時に肘を脇腹にくっつけるというか、脇を締めると肩から手首が連動しやすいのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか??脇を締めるイメージが正しいかどうかご教示頂けませんか。
それからシューマンの交響曲「春」の1楽章で246小節目アウフタクトからラミラミと16分音符で素早い移弦があります。その移弦のボゥイングは重音を弾くようにイメージすれば良いのでしょうか?
質問ばっかりですみませんがご教示宜しくお願い致しますm(_ _)m
投稿: ckちあき | 2013年3月16日 (土) 12時49分
ckちあきさん、こんにちは。
僧帽筋を柔らかく、というのは、確かにそのように思います。伸張反射が心配されるところ、すなわち、なかなか伸びようとしてくれない凝った筋肉はほぐしてあげないといけないでしょう。
腕の大きな動きは、三角筋、大胸筋、僧帽筋、広背筋などが連携して働くことによって生じますが、ボウイングは腕や指の動きが複雑で繊細、そして時には非常にゆっくりした動きをしなければいけませんから、ローテーターカフがそれら大きな筋肉の安定したしなやかな動きを助けてくれるはずです。たとえば僧帽筋が働きすぎると、肩が上がってしまって、弓がまっすぐ動いてくれませんが、ローテーターカフで支えて、僧帽筋を緩めれば、それは解消出来ます。
さらに、先弓で弾く時、重さのを加えるためにローテーターカフを内旋させるとともに、腕を広くのばすために、肩甲骨を前に出す(肩甲骨の外転)動きを伴っていればなお良く、これらを行うのが、肩甲骨底部と肋骨を結ぶ前鋸筋とういう筋肉だそうです。この時も、伸展する(力を抜いて伸ばす)のは、背中の僧帽筋と菱形筋だということになり、確かに僧帽筋を柔らかくということになりますよね。
これが出来ていると、高い方の弦ではあたかも脇の下に丸い空間ができたような肩や腕の広がりを感じます。低い方の弦は先弓が届いていることが多いためさほどではありませんが、肘を脇腹につけた時に腕が固くならなければ良いと思います。ただ、僕の場合は肘は脇腹にはつかないかな、という感じです。
それと、移弦のボウイングですが、滑らかであることは必要ですが、むしろ重音にならないように気をつけたいです。
連続した移弦の場合、弓の位置で右肘の振れ幅が異なることに十分注意を払うために、ゆっくりから初めて、肘の頂点の軌跡をイメージすると良いでしょう。ここでも、肩関節が安定していることは必須ですから、ローテーターカフを意識出来れば言うことなしです。
投稿: eflat | 2013年3月16日 (土) 19時34分
はじめまして、リハビリ職をしている、アマチュアチェリストです。
この記事、大変勉強になりました。
筋肉を意識しながら、弾いてみたいと思います!
追伸
手首のひねりは。。。からの、ご説明部分で、ちょっと、誤解がある様子ですので、説明させて頂きます。
肘関節は、屈曲と伸展しかしませんので、医学的、運動学的には、「回内・回外」は前腕の動きになります。
また、その前腕(肘から手首まで)に、橈骨と尺骨があり、上腕(肘から上の肩まで)にあるのは、上腕骨のみですので、手首を回すのは、前腕の回内・外の動きということになります。
投稿: セラピスト | 2013年10月19日 (土) 21時32分
セラピストさま。コメントありがとうございます。
ご指摘の通りだと思います。自分自身でそのような前腕の構造や動きを誤解していた訳ではないのですが、曖昧な表現は読む人に誤解を与える可能性があると感じます。「回内」等専門用語を使用する場合に求められる正確性については、ブログ、著書等の表現をする場合、専門家の監修が必要であるなぁと感じるところです。使わないでわかればそれで良いのですが、それだといいたいことが曖昧になる可能性もあると思います。
今後の課題とします。
投稿: eflat | 2013年10月20日 (日) 12時17分