左手が動かなくなってから、人前で演奏する意味を考えて来ました。倒れた当時、入院していた頃は、破壊の後に生まれる新しい芸術などという、半ばやけくそ、半ば強がりなことを夢想し、たまにリハビリで言語聴覚士に語ってみたりしたこともありましたが、退院し、社会復帰をするにつれ、現実感を取り戻すとともに、結局残るのは、動かないという事実のみ。
ただ、うまく弾けなくとも、その左手でリハビリがてらチェロを弾くこと自体は、消耗は激しいものの、苦痛ではなかったのが救いといえば救いだったかもしれません。その後遺症が癒えていくことを強く願っていたわけではありません。というのも、3年、4年と経つうち、動きが良くなる様子は、思うほど改善していかないことが段々わかって来たからです。
なので、それを、願いではなく、課題と考えることにしました。課題なら、一生かけて解決しようという気持ちが、生きがいに出来るから。
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